こんにちは。ライフオーガナイザーの吉川圭子です。
ふだんは、片付けに困っている方のご自宅などにお伺いして片付け作業を行ったり、片付けの講座を開催したりしています。
ものごとを斜に構えてみる、ひねくれ者(笑)の私は、(昔は自分もそうだと思っていたくせに)世の中に広まってくると「え、でもそれってちょっとどうなの?」と思ってしまうところがあります。
そのひとつがシンプルライフ。
『シンプルライフ=量より質』じゃないですか。「質のいいものを少しだけ持ちましょう」っていうアレ。
でもそれってどうなのよ?っていう話です。
質を上げるには量があることが大前提
シンプルライフやミニマムライフを提唱しているサイトでよく見かけるフレーズが、『レス・イズ・モア(Less is more)』。
「より少ないことはより豊かなこと」という意味らしいです。
暮らしをシンプルにしたいなら、最小限必要なものだけを持つ。その通りだと思います。
このときに必要な作業が『そぎ落とす』。
自分自身を、自分の暮らしをよく見極めて、なくてもよいものをそぎ落とす。これを繰り返すことで、だんだんと質が上がってきます。
ということは、そぎ落とすためにはそぎ落とせるだけの量が必要なんです。
量があるからこそ比較対象ができます。不要なものや余分なものをそぎ落として、本当に必要なものが見えてくるわけです。
「量を持ちたくない。けど質を上げたい」という矛盾
けれど、暮らしをシンプルにしたい多くの人は、量を持ちたくありません。
できるだけ少ないもので暮らしたい。暮らしの質をあげたい。
もし、「質の良さ」の定義が「高価な」とか「ブランド」とか「定番」であるならば、その次にやることは定義に合ったものを調べて購入すればよいでしょう。
でも、『自分の』暮らしの質をあげたいならば、まずは自分にとっての「質の良さ」がなんなのか、それを決めることから始めなければなりません。
そのためには量が必要。でも、量は持ちたくない……(以下ループ)。
モノにしろサービスにしろ、事前の情報収集は大事。口コミをみて判断材料にするのはよいことです。けど、自分に合ってるかどうかは実際に試してみないとわからない。
トライアンドエラーを繰り返すことが成功の近道だとすると、「量は持ちたくないけれど質はあげたい」って、実はかなり難易度の高い願望なのかもしれません。
大人には「ムダなもの」だとわかるけど子どもは違う
「子どもにも本当に必要なものを選べるようになってほしい」
そう願う親は多いでしょう。
私もそうです。子どもたちが小さいころは家の中がたくさんのものであふれないよう、ある程度こちらで吟味していました。
ただ、それが行き過ぎると子どもが学ぶ機会を失います。
たとえば、子どもがおもちゃを欲しがったとき、大人の視点で見ると「そのうち使わなくなりそう」な、自分の経験上むだだと判断できるものだと、ついつい否定したくなります。
大人は子どもよりも人生経験がありますから、過去の経験と照らし合わせてむだかどうか判断できますから。
でも、経験がない子どもにはむだかどうかわかりません。
「子どもにも本当に必要なものを選べるようになってほしい」なら選ぶ経験が必要で、選んで失敗したとしてもその経験は判断材料が増えることにつながります。
シンプルライフを目指したい人には悩ましいところではありますが。
おわりに
以上、「シンプルライフにまつわる誤解」でした。
片付け作業にうかがうと、ものをたくさん持っていることに罪悪感や劣等感を感じて、「すみません」と謝られる方が少なくありません。
私は基本的に、だれがどのくらいモノを持っていようがいまいが何とも思いません。個人の自由を他人がとやかく言う権利はないですから。
ただ、ものをたくさん持っていることで苦しい人には、できる限りのサポートをしています。
空間に対してものの量が多いときはやっぱり減らさなければなりません。でも、量があることがその人の暮らしに必要なものを浮かび上がらせてくれたりするんです。
だから、お客さまにも「量があるってことは悪いことじゃないんですよ」とお伝えしています。
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こちらは以前書いた「誤解シリーズ」。
片づけのプロに対する誤解シリーズはコチラ:
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